【実技対策】なぜ「聞き上手」が不合格になるのか?評価項目「傾聴」に潜む恐ろしい罠

「あなたは聞き上手ですね」

 

友人や同僚からそう言われることが多い人ほど、「自分はキャリコンに向いているのではないか」と感じてしまうのではないでしょうか。

しかし、実際は逆で、キャリアコンサルタント試験の「傾聴」で苦戦することがあります。

 

一生懸命に頷き、相手の話を否定せず、最後まで聞いているはずなのに、試験結果の評価は「関係構築が不十分」や「傾聴ができていない」……。

そんなもどかしい思いをしていませんか?

実は、日常の聞き上手とプロの傾聴には、「似て非なる決定的な違い」があります。

今回は、合格ラインに届かない人がハマりがちな「3つの罠」と、そこから抜け出すための具体的なセリフ集をお伝えします。

 

【受容の罠】「同意」と「受容」を履き違えていませんか?

日常の会話では、相手の意見に「そうだよね、私もそう思うよ」と賛成することが、良い関係を作る秘訣です。

しかし、キャリコン試験における「受容」は、相手への「同意」とは全く別物です。

 

例えば、相談者が「上司がひどい人で、もう耐えられません」と言ったとき、あなたが「それはひどい上司ですね。辞めたくなるのも当然です」と返したとしましょう。

これは「同意」です。

一見寄り添っているようですが、これでは相談者の主観にあなた自身が飲み込まれてしまい、プロとしての「中立性」を失ってしまいます。

「上司がひどくて、耐えられないのですね」と自分の主観をいれずに、相手が話したことをそのまま返す。

これこそが「受容」です。

 

慶史
私もはじめのうちはその違いがよくわかりませんでしたが、繰り返しロープレを行っていく中で、違いに気付くことができました。感覚を掴むまで、繰り返し練習することがポイントです。

 

■ 具体的なセリフ集:受容の修正

NG(日常の聞き上手) OK(プロの受容)
「それは大変でしたね。そんな上司、ひどすぎますよ」
※解説:上司を悪者にする同意。
「上司の方とのやり取りの中で、あなたは非常に理不尽な思いをされたのですね」
※解説:感情の存在をそのまま認める受容。

 

【共感の罠】「わかる」という言葉の傲慢さ

「わかります。私も以前、同じ経験をしました」……。

良かれと思って口にするこの言葉が、実は相談者の心を閉ざす引き金になることがあります。

これをプロの世界では「投影」と呼びます。

 

「わかる」と言った瞬間、相談者の物語は、あなたの過去の物語にすり替わってしまいます

相談者は「この人は私を見ていない。自分の記憶を見ているんだ」と直感します。

こうなると、相手はその後、本当の思いを話してくれないくなるでしょう。

 

では、キャリアコンサルタントにおける“共感”とはなんでしょうか。

それは、自分の経験を押し当てることではなく、相手の靴を履いて、相手が見ている世界を同じように眺めようと努力することです。

慶史
たとえ同じ“辛い”という感情であっても、感じ方は十人十色です。本当の意味での同じ経験というものは本来存在しないことを、意識しておくと良いでしょう。
 

■ 具体的なセリフ集:共感の修正

NG(日常の聞き上手) OK(プロの共感)
「わかります。私も転職に失敗したときは本当に辛かったですから」
※解説:主役が自分に移っている。
「私が想像もできないほど、深いお悩みの中にいらっしゃるのですね。その辛さを、もう少し詳しく聴かせていただけますか?」
※解説:相手の唯一無二の経験を尊重している。

 

【自己一致の罠】「プロらしい仮面」がラポールを壊す

試験中、「キャリコンらしく振る舞わなきゃ」と緊張し、顔が強張っているのに、言葉だけ「お辛いですね」と言っている……。

ロジャーズはこの状態を「不一致」と呼びました。

実際、ご自身がクライアントの立場だったらどう感じるでしょうか。

試験だろうが実際の現場だろうが、相談者の話が複雑で理解できないとき、分かったフリをして相槌を打つのが一番のタブーです。

 

自己一致(純粋性)とは、自分の内面と外に出す言葉が一致していること。

分からないときは、「私の理解が追いついていないかもしれません」と素直に伝える。

その誠実さこそが、深い信頼関係を築くのです。

慶史
分からないことを分からないというのは勇気のいることですが、フリは必ず信頼関係の崩壊を生みます。より一層素直な気持ちを持つようにしてください。

 

■ 具体的なセリフ集:自己一致の実践

NG(仮面を被った対応) OK(自己一致した対応)
(パニックになりながら)「……はい、なるほど。ええ、わかります。続けてください」
※解説:心と言葉がバラバラで、相手を不安にさせる。
「今のお話、私の理解が追いついていないかもしれません。大切なことなので、もう一度、整理して伺ってもよろしいでしょうか」
※解説:分からない自分を認める誠実さ。

 

得点を伸ばす「スポットライト」の切り替え術

日常の聞き上手は、スポットライトを「相談者が語るストーリー(事件)」に向けてしまいます。

一方、キャリコンの傾聴は、スポットライトを「ストーリーを見つめる相談者自身(心の動き)」に向ける必要があります。

 

「何が起きたか」という事実を確認する時間は、最小限で構いません。

それよりも「その時、どう感じたか?」「その経験はあなたにとってどんな意味があるのか?」という問いを投げかけ続けてください。

この切り替えができるだけで、ロープレの空気感は劇的に変わります。

 

まとめ:傾聴は「手法」ではなく「生き方」

「聞き上手」の罠から抜け出すのは、実はとても勇気がいることです。

自分の意見を脇に置き、相手の世界の暗闇に一緒に降りていく作業だからです。

この技術は、受験生のみなさんだけでなく、お子さんやパートナーを持つ保護者の方にとっても一生モノの宝物になります。

 

相手を評価せず、ただそこに在る感情を受け止める。

その温かな時間が、大切な人の自己肯定感を育んでいくからです。

あなたが「良い人」を卒業し、一人のプロフェッショナルとして目の前の人に寄り添えるよう、私はずっと応援しています。

明日から実践できる「小さな一歩」

明日、誰かと話をするとき、相手の言葉に「それは○○というお気持ち(感情)だったんですね」と、感情の言葉を一つだけ添えて返してみてください。

アドバイスは必要ありません。

ただ、相手の心の色を言葉にするだけで、関係は驚くほど深まります。

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